はじめに
2020年1月、私は異業種からインフラエンジニアに転職しました。
当時は「サーバーって何?」というレベルでした。
Linuxコマンドも、AWSも、ネットワークの知識もゼロです。
それでも今は、AWS・Terraform・Linux を日常的に扱うインフラ・クラウドエンジニアとして6年目を迎えています。
当時の私が一番困ったのは「何から勉強すればいいかわからない」という点でした。
ロードマップがなく、手当たり次第に本を買って挫折する、というサイクルを繰り返しました。
この記事では、異業種からインフラエンジニアへの転職を目指している方、または転職したばかりの0〜3年目の方に向けて、2026年現在で最も実践的な学習ロードマップを解説します。
この記事の対象読者
- インフラ・クラウドエンジニアに興味があるが、何から始めればいいかわからない方
- 転職活動中で、スキルの優先順位を整理したい方
- 駆け出しインフラエンジニアで、次に何を学ぶべきか迷っている方(0〜3年目)
ロードマップ全体像
まず全体像を把握することが重要です。以下の順番で学習を進めることを推奨します。
Step 1: Linux基礎
Step 2: ネットワーク基礎
Step 3: AWS基礎(クラウド入門)
Step 4: インフラのコード化(Terraform入門)
Step 5: 資格取得で実力を証明する
各ステップを順番に飛ばさず進めることがポイントです。「AWSだけ先に覚えよう」と思いがちですが、Linuxとネットワークの基礎なしではクラウドの理解が表面的になります。私自身、最初にこの順番を無視して遠回りしました。
Step 1: Linux基礎を固める(目安:1〜2ヶ月)
インフラエンジニアの仕事は、Linuxサーバーの操作が中心になります。まずは基本的なコマンドを習得しましょう。
最初に覚えるべきコマンド20選
# ディレクトリ操作
ls -la # ファイル一覧を詳細表示
cd /var/log # ディレクトリ移動
pwd # 現在地確認
mkdir mydir # ディレクトリ作成
# ファイル操作
cat /etc/hosts # ファイル内容を表示
less /var/log/syslog # ページングしながら表示
grep "error" app.log # キーワード検索
tail -f /var/log/nginx/access.log # リアルタイムログ確認
# プロセス・システム確認
ps aux # 実行中のプロセス一覧
top # リソース使用状況
df -h # ディスク使用量
free -h # メモリ使用量
# 権限・ユーザー管理
chmod 755 script.sh # 実行権限を付与
chown user:group file # 所有者変更
sudo su - # rootユーザーに切り替え
# ネットワーク確認
ping 8.8.8.8 # 疎通確認
curl -I https://example.com # HTTPヘッダー確認
ss -tlnp # 開いているポート確認
初心者がつまずくポイント: chmod の数字(755, 644)の意味がわかりにくいです。「7=rwx=読み書き実行」「5=r-x=読み実行のみ」と分解して覚えると理解しやすくなります。
学習方法
ローカルに仮想環境(VirtualBox + Ubuntu)を構築して手を動かすのが最も効果的です。「読むだけの勉強」では定着しません。
Step 2: ネットワーク基礎を学ぶ(目安:1ヶ月)
クラウドの設計で必ずネットワーク知識が必要になります。以下の概念は最低限押さえてください。
- IPアドレスとサブネット(192.168.0.0/24 の意味を理解する)
- TCP/IPの通信の流れ(DNSでドメインをIPに変換 → TCPで接続)
- HTTPとHTTPS(ポート80と443の違い)
- ファイアウォールの役割(インバウンド・アウトバウンドの概念)
この段階ではネットワーク関連の入門書を1冊読むことをおすすめします。
Step 3: AWS基礎を習得する(目安:2〜3ヶ月)
2026年現在、クラウドエンジニアの求人はAWSが圧倒的多数です。まずはAWSから始めましょう。
最初に学ぶAWSサービス5選
| サービス | 役割 |
|---|---|
| EC2 | 仮想サーバー |
| S3 | オブジェクトストレージ |
| VPC | 仮想ネットワーク |
| IAM | 権限管理 |
| RDS | マネージドデータベース |
AWS CLIを使ってみる
AWSはコンソール画面(GUI)だけでなく、コマンドラインからも操作できます。CLIを使えることは現場では必須スキルです。
# AWS CLIのインストール確認
aws --version
# S3バケットの一覧を取得
aws s3 ls
# EC2インスタンスの一覧を取得(特定リージョン)
aws ec2 describe-instances \
--region ap-northeast-1 \
--query 'Reservations[*].Instances[*].[InstanceId,State.Name,Tags[?Key==`Name`].Value|[0]]' \
--output table
# S3にファイルをアップロード
aws s3 cp ./myfile.txt s3://my-bucket/myfile.txt
資格取得のすすめ: AWS CLIの学習と並行して「AWS CLF(クラウドプラクティショナー)」の取得を目指しましょう。試験勉強がそのまま基礎知識の習得につながります。
Step 4: Terraformでインフラをコード化する(目安:1〜2ヶ月)
現在の現場では「インフラのコード化(IaC)」が当たり前になっています。
Terraformはその代表的なツールです。
転職時にTerraformの経験があると、他の候補者と大きく差別化できます。
私がこれを学んだのは転職後でしたが、「転職前に知っていれば良かった」と強く感じています。
Terraformで最小構成のEC2を作成する例
# main.tf
terraform {
required_providers {
aws = {
source = "hashicorp/aws"
version = "~> 5.0"
}
}
}
provider "aws" {
region = "ap-northeast-1"
}
# VPCの作成
resource "aws_vpc" "main" {
cidr_block = "10.0.0.0/16"
tags = {
Name = "my-vpc"
}
}
# パブリックサブネットの作成
resource "aws_subnet" "public" {
vpc_id = aws_vpc.main.id
cidr_block = "10.0.1.0/24"
availability_zone = "ap-northeast-1a"
tags = {
Name = "public-subnet"
}
}
# EC2インスタンスの作成
resource "aws_instance" "web" {
ami = "ami-0d52744d6551d851e" # Amazon Linux 2023
instance_type = "t3.micro"
subnet_id = aws_subnet.public.id
tags = {
Name = "my-web-server"
}
}
基本コマンドは3つだけです。
terraform init # 初期化(プロバイダーのダウンロード)
terraform plan # 変更内容のプレビュー
terraform apply # 実際にインフラを作成・変更Step 5: 資格取得で転職を有利に進める
スキルを客観的に証明するために資格は有効です。優先順位は以下の通りです。
- Linux技術者認定(LPIC-1) または LinuC Level 1 ― Linux基礎の証明
- AWS Certified Cloud Practitioner(CLF) ― AWSの基礎知識
- AWS Certified Solutions Architect – Associate(SAA) ― 設計力の証明
まとめ
インフラエンジニアへの転職ロードマップをまとめます。
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| Step 1 | Linux基礎コマンド | 1〜2ヶ月 |
| Step 2 | ネットワーク基礎 | 1ヶ月 |
| Step 3 | AWS基礎 + CLF取得 | 2〜3ヶ月 |
| Step 4 | Terraform入門 | 1〜2ヶ月 |
| Step 5 | SAA取得・転職活動 | 1〜2ヶ月 |
合計で6〜10ヶ月が現実的な目安です。仕事をしながらの学習なら少し余裕を持って計画しましょう。
大切なのは「手を動かすこと」です。本を読むだけでは現場で使えるスキルは身につきません。AWSの無料枠を使ってサーバーを立て、壊して、また作る。この繰り返しが最速の近道です。

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